車体整備業と法対応の参考例

●有機溶剤中毒予防規則について

 自動車塗装における有機溶剤取り扱い事業所と、その職場で働く方々にとって、必要な項目を取り上げました。
  労働安全衛生法の中に、快適な職場環境を創るための最重要課題のひとつとして『有機溶剤中毒予防規則』が規定されていますが、届け出や実行をしている工場が少ないのが実態です。
 この機会に以下の内容をよく読み、実行、届け出されることをお勧めします。

以下の内容を踏まえた『塗装室・調色室・サンディングルーム等の定期自主検査記録表』をご用意しました。ダウンロードしてご使用ください。 (PDFファイル538KB)


◆労働安全衛生法 有機溶剤中毒予防規則 要約◆

●第一章 総則

(定義)
有機溶剤とは、有機溶剤が混合物の重量で5%以上含有するもの。
有機溶剤業務とは、濾過、混合、攪拌、加熱、容器へ注入、自動車塗装以外の業種は、染料、医薬品、農薬、香料、甘味料、火薬、写真薬品、印刷、看板、絵、艶出し、防水、接着業務、洗浄、塗装の業務、有機溶剤乾燥業務、タンクの内部業務

(適用の除外)
1時間に消費する有機溶剤等の量が許容消費量を超えない時。(他にも詳細な条件あり)

(認定の申請手続き等)
許容消費量により異なるが、有機溶剤中毒予防規則一部適用除外認定申請書に作業場の見取り図を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

●第二章 設備

(第一種・第二種有機溶剤等にかかわる設備)
労働者は屋内作業場において、有機溶剤にかかわる業務に労働者を従事させる時は、有機溶剤業務を行う作業場所に有機溶剤の蒸気の発散源を密封する設備、局所排気装置、又は、プッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(適用除外)
屋内作業場の周壁が2面以上、かつ、周壁の面積50%以上が直接外気に向かって開放されている事。

(私見)
第一種・第二種有機溶剤取り扱いについては、業種としての大枠の判断であり、自動車の塗装業務では周壁の50%を開放すると塗装ミストが周辺の環境に悪影響を及ぼし、問題が発生するリスクがあります。

●第三章 換気装置の性能等

(局所排気装置)
排気装置の排気口の高さは屋根から1.5m以上としなければならない。
プッシュプル型換気装置の性能は、厚生労働大臣が定める構造及び性能を有するものである事。
局所排気装置にかかわる作業場の有機溶剤の濃度測定の規定に準じ、局所排気装置稼働許可申請書、見取り図、その他

●第四章 管理

(有機溶剤作業主任者の選任)
有機溶剤作業主任者技能講習を修了したもののうちから、有機溶剤作業主任者を選任しなければならない。

(有機溶剤作業主任者の職務)
作業者が有機溶剤に汚染されたり、吸収しないように作業者に指揮する。局所給排気装置、プッシュプル型換気装置、又は、全体換気装置を1ヶ月を超えない期間毎に点検する。

(局所排気装置の定期自主検査)
給排気、換気装置は1年以内毎に1回、定期的に自主検査を行わなければならない。
フード、ダクト及びファンの摩耗、接続部の腐食、くぼみ、損傷、ファンの注油点検、ベルトの緩みと作動状況等。

(記録)
自主検査を行い、3年間保存しなければならない。
1.検査年月日
2.検査方法
3.検査箇所
4.検査結果
5.検査を実施した者の氏名
6.検査の結果に基づいて補修などの措置を講じたときは、その内容を記載

(補修)
自主検査を行った場合において、異常を認めた時は直ちに補修しなければならない。

(掲示)
屋内作業場などに、作業者が容易に知ることができるよう、見やすい場所に次の事項を掲示しなければならない。

1.有機溶剤の人体に及ぼす作用
2.有機溶剤の取り扱い注意事項
3.有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置方法

有機溶剤業務にかかわる有機溶剤等の区分を、作業者が容易に知ることができるよう、色分け及び色分け以外の方法で、見やすい場所に掲示する。

1.第一種有機溶剤等   赤色
2.第二種有機溶剤等   黄色
3.第三種有機溶剤等   青色

(事故の場合の退避等)
事故が発生し有機溶剤中毒の恐れがある場合は、直ちに作業を中断し、作業場から退避させなければならない。
また、有機溶剤の汚染が、完全に除去されるまで現場に立ち入りさせてはならない。
人命救助又は危険防止に関する作業をする場合は、その限りではない。

1.排気装置等の機能等が故障等で低下、又は失われたとき
2.有機溶剤業務を行う場所の内部が有機溶剤等で汚染される事態が生じたとき

●第五章 測定

(測定)
有機溶剤を取り扱う業務を行う屋内作業場について、6ヶ月以内毎に1回(年2回ではありません)定期的に有機溶剤の濃度測定をしなければならない。
測定の記録は次の事項を記録して、3年間保存しなければならない。

1.測定日時
2.測定方法
3.測定箇所
4.測定条件
5.測定結果
6.測定を実施した者の氏名
7.測定結果に基づいて有機溶剤による労働者の健康障害の予防措置を講じたときは、措置の概要記  入

(測定の結果に基づく措置)
評価の結果、第三管理区分に区分された場所については、直ちに、施設、設備、作業工程、作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備又は整備、作業工程、作業方法、その他作業環境を改善するため必要な処置を講じる。
その結果を確認するために、再度有機溶剤の濃度を測定し、有効な呼吸用保護具を使用させるほか、健康診断の実施、その他作業者の健康維持のための処置を講じなければならない。

●第六章 健康診断

(健康診断)
事業者は、業務に常時従事する労働者に対し、雇用受入れ時、配置転換時、6ヶ月以内毎に1回、定期健康診断を行わなければならない。
健康診断にて、医師が再検査を必要と認めたときは、

1.業務条件の調査
2.貧血検査
3.肝機能検査
4.腎機能検査
5.神経内科学的検査

(健康診断の結果)
健康診断書は個人票を作成し、これを5年間保存しなければならない。
健康診断を3年間行い、健康診断の結果、新たに有機溶剤による異常がみつからない場合は、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、健康診断及び個人票の作成及び保存を行わないことができる。
但し、有機溶剤等健康診断特例許可申請書に必要書類を添えて申請しなければならない。

●第七章 保護具

(送気マスクの使用)
局所排気装置、プッシュプル型換気装置を使用しないで行う有機溶剤を使用する作業。
プッシュプル型換気装置を設け、荷台にあおりのある貨物自動車等で気流を乱す恐れのある形状を有するものについての業務。
密閉した室内で行う有機溶剤を使用する業務。

(保護具の数等)
就業する労働者の人数と同等以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない。

●第八章 有機溶剤の貯蔵及び空容器の処理

(有機溶剤等の貯蔵)
有機溶剤等を屋内に貯蔵する場合は、こぼれ、漏れ、しみ出し、発散する恐れのない蓋、栓をした強固な容器を用いる。その貯蔵場所に次の設備を設けなければならない。

1.係労働者以外の労働者がその貯蔵場所に立ち入ることを防ぐ設備
2.有機溶剤の蒸気を屋外に排出する設備

空容器は屋外の一定の場所に集積しておかなければならない。

●第九章 有機溶剤作業主任者技能

(講習)
有機溶剤作業主任者技能講習は、学科講習によって行う。

1.健康障害及びその予防措置に関する知識
2.作業環境の改善方法に関する知識
3.保護具に関する知識
4.関係法令

以上

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